「世界語」とも呼ばれる英語。それだけに多様な方言を持ち、スラング(俗語)ともなるとそのバリエーションは一段と豊かになります。当辞典では、アメリカの高校で学びカナダの大学で言語学を修めた日本人が、各国共通のものは勿論、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等の英語スラングを方言・各英語圏・地域別に分類、使用法・和訳・意味・由来・発音(読み方)を解説していきます。
"動く歩道"は英語で何て言うの? - イギリス英語・アメリカ英語での違い
皆さんは動く歩道って何と呼びますか?
そのまま動く歩道?ムービングウォーク? この二つが大多数を占めるような気がしますがどうでしょうか。
では本題。英語では何と呼称するのでしょうか。これ、moving walkwayなんて呼ばれたりするんです。訳すとそのまま、動く(moving)歩道(walkway)です。単純明快。これは分かりやすいですね。
成田空港のターミナル内で動く歩道に乗っていると、"The end of the walk is ahead. Please watch your step.(まもなく降り口です。ご注意下さい。)"なんて音声が流れてくるのですが、明らかにそれが何であるか聴者(歩行者)が分かっている状況では"the walk"と呼ばれたりもします。
さて、更にお話を掘り下げていきましょう。
実はこの単語、呼び方に地域差があるのです。
アメリカ英語では、moving sidewalkなんて呼んだりします。動く(moving)歩道(sidewalk)、これも分かりやすいですね。
このsidewalkという単語は、アメリカ英語です。イギリス英語ではpavementという単語が歩道を意味します。
…ということは、
「ハハーン。」
「パターン、パターン。見えてきたよ。」
…とならないのが言語の面白いところ。
イギリス英語では動く歩道は"moving pavement"とは呼ばれないのです(私の知っている限りでは。識者の皆様、間違っておりましたらお知らせください)。
イギリスではあのフラットなコンベヤーには、travelatorなんて名前が付いています。
-torは- 「…する人[物]」の意の名詞を造る接尾辞ですね(※1)。travel("旅行する"、という意味だけでなく、"進む"とか"動いて進む"なんて意味があります)するものってことですね。
※1 escalator(エスカレーター)等が身近な例でしょうか。escalate(次第に上昇する)という意味の動詞に-torという動詞が合わさった単語です。
仕事の関係上シンガポールに顔を出すことが多い筆者ですが、かの国ではこのイギリス式のtravelatorが採用されています。これは、シンガポールがイギリスの元植民地であることによります。
また、同じくイギリス英語では、walkalatorと呼ばれたりもします。これは歩くを意味する動詞のwalkと、上述のescalatorの合成語。歩くエスカレーターってところでしょうか。
アメリカ人のクライアントに"チャンギ空港のtravelatorがね…"ていう私の発言が通じなかった時にふと思いついたこの記事。機会があればまた似たような内容でエントリを上げてみようと思いますので、こうご期待!!